ラマダンとイードとは？ オーストラリアでの祝い方

イスラム文化におけるラマダンとイードがイスラム教徒の同僚や友人、隣人にとってどれほど重要かご存知ですか？

Photo taken in Bangkok, Thailand Credit: Songyuth Unkong / EyeEm/Getty Images

キーポイント

• ラマダンはイスラム教で最も神聖な月であり、健康な成人のイスラム教徒は夜明けから日没まで断食をします
• イード・アル・フィトルは、聖なる断食月の終わりを祝う3 日間の祭典
• オーストラリアのイスラム教徒は、独自の文化的慣習をイードのお祝いで表します

世界のイスラム教徒人口は19億7000万人と考えられ、オーストラリアにはそのうちのおよそ81万3000人が暮らしていると言われています。

オーストラリアのような多文化社会では、自分と異なる信仰や文化を持つ人と出会ったり、友達になったり、ともに働くことは日常的なことです。

互いの信仰や文化を理解し、感謝することは、まとまりのある多文化社会を築くために重要です。

オーストラリアと世界中のイスラム教徒は、1 ヵ月にわたる礼拝と断食の月であるラマダンに入りました。

The Islamic Hijri calendar, is based on the cycles of the moon around the Earth. Credit: Pixabay

ラマダンとは?

ラマダンはイスラム教の太陰暦の9番目の月の名称で、この期間、健康な成人のイスラム教徒は日の出から日没まで断食を行います。

メルボルン、チャールズ・スチュアート大学のイスラム研究・文明センターの副所長を務めるズレイハ・ケスキン准教授によると、ラマダンはイスラム教徒にとって「膨大な学びと成長がある月」でもあります。

ラマダンはイスラム教徒にとって1年で最も神聖で特別な月となります。

Associate Professor Zuleyha Keskin, Associate Head of the Centre for Islamic Studies and Civilisation at Charles Stuart University, Melbourne.

 ヒジュリ暦とも呼ばれるイスラム暦は、地球を回る月の周期をもとに作られているため、太陽暦より10～12日短く、そのためイスラム行事の日程は毎年異なります。

今年は、3月22日から4月20日までが聖なる月、ラマダンにあたります。

A meal with loved ones during Ramadan. Source: iStockphoto / PeopleImages/Getty Images/iStockphoto

なぜイスラム教徒は断食をするの?

アラビア語で「サウム」と呼ばれる断食は、イスラム教の５つの柱（信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼）のひとつです。

断食中は特に、喫煙、性的関係、怒り、口論、不道徳な行為などを慎むことが求められています。

また、礼拝をはじめ、コーランを読み、理解すること、慈善活動なども奨励されています。そして多くのイスラム教徒は、断食明けのイフタールに、モスクに足を運びます。

オーストラリア国立大学アラブ・イスラム研究センターのディレクターであるカリマ・ラチール教授は、ラマダンは単に食べ物や飲み物を控える月ではないと説明します。

「スピリチャルな月であり、自分の信仰や神とのつながりを取り戻すことに専念する月なのです」

思いやりのある人間になるために、貧しい人々や食べるものに困っている人々のニーズを理解し、私たちを取り巻く世界とのつながりを再確認する月なのです。

Professor Karima Laachir, Centre for Arab and Islamic Studies, ANU

また祈りや宗教的な義務であることに加え、断食には健康上の利点もあると話します。

「断食は、体の代謝を整え、体内の毒性を浄化するため、非常に健康的です。断続的断食（インターミッテント・ファースティング）と身体への重要性はすでに知られています。断食も健康的なプロセスであることが証明されています」

Healthy adult Muslims are required to fast from dawn to dusk during Ramadan. Source: Moment RF / Jasmin Merdan/Getty Images

イードとは?

1ヵ月の断食を乗り越えるとやってくるのがイードです。

イードはアラビア語で「祭り」や「饗宴」を意味する言葉で、イスラム暦では主に2つのイード、「 イード・アル・フィトル」と「イード・アル・アドハー」があります。

イード・アル・フィトルは「小さなイード」とも呼ばれ、ラマダン月（断食月）の終わりを告げる3日間の祝祭を指します。

イード・アル・フィトルは、ラマダン月に達成したことを祝う機会です。

Dr Zuleyha Keskin, Centre for Islamic Studies and Civilisation, Charles Stuart University

また、イードを迎えるにあたり、イスラム教徒はザカート・アル・フィトルと呼ばれる慈善活動を行うことが義務付けられています。そのため、貧しい人々も祝うことができるのです。

ラチール教授は、イード・アル・フィトルは「一体感と許し」の祭典であり、コミュニティー精神を活性化し、イスラム教徒に許しを求めるよう促すものだと言います。

さらに、子供たちにとっては、楽しみながら新しい友人を作り、文化に親しむ絶好の機会でもあります。

In most Islamic countries, Eid al-Fitr is a public holiday. Source: iStockphoto / Drazen Zigic/Getty Images/iStockphoto

子供たちに新しい服を買ったり、家を掃除したり、特別なお菓子や料理を準備することは、イードの準備の大きな部分を占めています。

今年のイード・アル・フィトルは、月の出方によって、4月21日か22日のどちらかになります。ほとんどのイスラム諸国では、イード・アル・フィトルは祝日となっています。

一方、「犠牲のイード」または「より大きなイード」とも呼ばれるイード・アル・アドハーは、毎年恒例のハッジ巡礼の後に行われ、アブラハムが神の命令に従って息子イシュマエルを犠牲にしたことを祝うものであります。

Members of the Muslim community celebrate Eid al-Fitr, marking the end of the month-long fast of Ramadan with prayer at Lakemba Mosque in Sydney. Source: AAP / DEAN LEWINS/AAPIMAGE

オーストラリアのイスラム教徒は、イードをどのように祝う？

イード・アル・フィトルのお祝いは、イスラム暦10番目の月の初日の朝、特別なお祈りから始まります。

地元のモスクやコミュニティーセンターで共同礼拝が行われ、人々は「Eid Mubarak（ハッピー・イード）」と挨拶し合います。

また、家族や友人が互いに訪問し、イードの期間中は地域の集まりがよく開かれます。

「イードは家族みんなで祝うものです。みんながみんなを訪ね、イード・アル・フィトルの3日間は、宴会や食事、特別なケーキや料理を楽しみます」

しかし、オーストラリアのイスラム教徒は様々な国からきていることから、それぞれ独特な文化的慣習があり、お祝いの仕方も様々です。

Large crowds filled the Mosque in Lakemba and lined the streets to mark the end of the holy month of Ramadan, Sydney. Source: AAP / JANE DEMPSTER/AAPIMAGE

パキスタン出身のオーストラリア人、アリ・アワンさんは、オーストラリア最大のマルチカルチャル・イード・フェスティバルのひとつを主催しており、この時期は多忙を極めています。

アワンさんは、異なるバックグラウンドを持つイスラム教徒の間には、「大きな」文化的違いがあると説明し、それらをひとつにまとめることが彼の仕事でもあります。

「異なる料理を作ったり、イード当日に着るドレスが違ったり、またお祝いと一言で言っても、アクティビティやパフォーマンスなどはさまざまです」

イードフェスティバルでは、さまざまなパフォーマンス、さまざまな文化が一堂に会するように心がけており、それがオーストラリアの魅力でもあります。

Ali Awan, Australian Multicultural Eid Festival

カリマ・ラチール教授も、オーストラリアのイードのお祝いは、多くのイスラム諸国よりも多様でパワフルだと言います。

「オーストラリアのムスリムコミュニティーの素晴らしいところは、ほとんどのお祝いがコミュニティセンターや地元のモスクで行われることで、異なるバックグラウンドを持つすべてのコミュニティーがひとつになる傾向があることです」。

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